ある女性の患者さんは、トイレのドアを閉めると不安になってしまうので家では開けたまま排泄をしていました。家以外ではドアを閉めて鍵をかけないといけないのでトイレに行くことができないため、トイレを我慢できる時間しか出かけられないと悩んでいました。

　閉所恐怖症を持つ患者さんは一定時間、外に出られない環境に身をおくことができません。電車や飛行機などの乗り物に乗ることができない、エレベーターに乗ることもできない場合もあります。この患者さんのようにトイレや浴室のドアを閉めることができないという方もあります。

　このような患者さんへの治療法のひとつとして、まず3つ数える間だけトイレに入った際にドアを閉めるという試みから始めることがあります。具体的には、１、２、３と数えたらドアを開けてから排尿します。トイレに行くたびにこれを繰り返し、３つ数える間は大丈夫という経験を重ねると、だんだん不安にならなくなってきます。３つが平気になったら次は４までと１ずつ増やしていきます。そうしていくうちに、ドアを閉めて排尿できるようになっていくことが目標です。

　数が増えない時期や不安がぶり返して数が減ることもありますが、諦めずに続けていくことが重要です。３０まで数えられるようになれば、外出先のトイレも鍵をかけて入ることができ、友だちと遊びに出かける等、生活の範囲が広がってくるでしょう。

　このように認知行動療法は閉所恐怖症などのパニック障害に効果があると言われている治療法の一つです。薬物療法と組み合わせることで治療効果があがると言われています。実際には時間がかかりますし根気も必要ですが、前向きに取り組めば必ず改善します。